あなたの声が聞こえる

2020
318 x 410 mm
Acrylic on canvas

あなたの声が聞こえる

ある日、ふと散歩中に目を閉じると、確かにその声が聞こえてきた。

もうこの世界にはいない、ずっと一緒に笑い、泣き、くだらないことで腹を抱えて笑ったあの友達の声だった。耳ではなく、心の奥の奥で、まるでそっと耳元で囁かれるように。

「大丈夫だよ」「ここにいるよ」「寂しくなんかないだろ?」

最初は錯覚かと思った。でも、声は確かに響いている。もう触れられないはずの温もりが、胸の真ん中にじんわりと広がっていく。

下を向いて歩いていた足取りが、少しだけ軽くなった。涙がこぼれそうになるのは悲しいからではなく、ひとりじゃないと気づいた安堵からだった。

天国なんて遠い場所だと思っていたけれど、実はすぐそばにあるのかもしれない。大切な人たちは、形を変えて、いつも私たちの隣にいてくれる。声をかけてくれる。笑顔を見せてくれる。花びら一枚、風の匂い、夕焼けの色にさえ、彼らのメッセージが隠れている。

だから、もうそんなに寂しくない。

あなたの声が聞こえる。

それは、私がまだ生きている証拠であり、あなたが確かに存在した証拠であり、そして何より、私たちが永遠に繋がっているという、優しい奇跡の証拠なのだから。

ありがとう。 今も、ちゃんと聞こえているよ。

あなたの声は、永遠にここにいる

私たちは生きている限り、必ず「別れ」を経験します。
親、祖父母、友達、恋人、時にはまだ幼かったペットさえも。
その瞬間、世界が音を失ったように感じて、「もう二度とあの人に会えない」という事実が、鋭い刃物のように心を切り裂きます。

でも、この絵が教えてくれるのは、
「物理的にいなくなったこと」と「存在が消えたこと」は、全く別だということです。

声は聞こえる。
匂いを思い出す。
ふとした瞬間に、あの人の口癖が頭の中で再生される。
好きな曲を聴くと、隣で一緒に歌っていた姿が浮かぶ。
それらはすべて「幻」ではなく、確かにあった「愛の残響」です。

この世に生まれた瞬間から、私たちは無数の糸で人と繋がります。
笑った数だけ、泣いた数だけ、抱きしめた数だけ、その糸は強くなっていく。
だから肉体が土に還っても、その糸は切れない。
形を変えて、心という空にずっと張り巡らされたまま、私たちを支えてくれる。

「寂しい」という気持ちは、決して悪いものではありません。
それは「あなたが私にとってどれだけ大切だったか」の、生きている証明です。
でも、その寂しさの奥に、ちゃんと温かいものもある。
それは、もう会えないはずの人が、今も私を見守ってくれているという、静かな確信です。

この絵の子犬が下を向いて歩いているとき、
空には光の輪をつけたヒヨコが、優しく見つめています。
まるで「ほら、顔を上げて。私はここにいるよ」と語りかけているように。

だから私たちは、涙を流しながらも歩ける。
悲しみを抱えたまま、それでも明日を迎えられる。

あなたが今、誰かを想って胸が締めつけられているなら、
どうか少しだけ耳を澄ましてみてください。

風の音に、
子どもの笑い声に、
夕暮れの空の色に、
きっとその人の声が、そっと乗っています。

「大丈夫だよ」
「ありがとう」
「愛してるよ」

その声は、永遠に届き続けます。
あなたが生きている限り、
そして、あなたがその人を想い続ける限り。

この絵が教えてくれる、たった一つの真実——
愛は、死すら超えて、私たちに寄り添い続ける。
それが人生で一番優しくて、一番強い奇跡なのです。