スターライト・ハウス

2025
273 x 190 mm
Acrylic on canvas

スターライト・ハウス

長い旅の果てに、シルクハットを被った小さな犬は、ついにその丘にたどり着いた。
ピンク色の空に浮かぶ、まるで夢のような緑の丘。
その頂上に、星の灯りを冠した白い家があった。
「スターライト・ハウス」——子供の頃から胸に抱いてきた、願いの終着点。

道のりは決してやさしくなかった。
雨に打たれ、風に煽られ、何度も「もうダメかもしれない」と思った。
それでも歩き続けたのは、あそこに行けばきっと「自分の居場所」が見つかると信じていたからだ。
誰かに必要とされたい。
誰かと笑い合い、温もりを分け合いたい。
そんな当たり前の願いが、犬をここまで連れてきた。

丘の上の家は、遠くから見ていたよりもずっと小さかった。
扉の前まで来ると、足がすくむ。
胸の奥で、喜びと恐怖が同時に鳴り響く。

「やっと着いた……」
でも、同時に頭をよぎるのは、
「ここで本当にいいのだろうか?」という問いだった。

扉を開けたら、笑顔で迎えてくれるだろうか。
それとも、知らない犬が来たことに戸惑うだけだろうか。
「あなたを待っていたよ」と言ってくれる人がいるだろうか。
それとも、静かに首を振られるだけだろうか。

期待が大きければ大きいほど、不安もまた大きくなる。
願いが叶う瞬間というのは、実は一番怖い瞬間でもあるのだと、
犬は今、身をもって知った。

でも、立ち止まることはできない。
旅はここで終わりではない。
ここからが、本当の始まりなのだから。

小さな犬は、震える前足を一歩前に踏み出す。
シルクハットのつばをそっと押さえ、深呼吸をして、
そっとノックをした。

——ドキドキという音は、自分の心臓だけではなかった。
扉の向こうにも、誰かの心臓が、同じリズムで鳴っている気がした。

どんな出会いが待っていても、
どんな答えが返ってきても、
ここまで歩いてきた自分を、犬は誇りに思う。
願いに向かって歩き続けた勇気を、決して恥じない。

星の灯りが優しく揺れる夜。
スターライト・ハウスは、ただそこに在って、
すべての旅人を、静かに待っている。

あなたにも、きっとあるはずだ。
胸の奥に灯る、小さな星のような願い。
いつかその丘にたどり着く日が来る。
そのとき、あなたの心も同じようにドキドキするだろう。
期待と不安が半分ずつで、でも、それでも前に進むだろう。

その瞬間を、私はここで、
シルクハットの犬と一緒に、
そっと見守っているよ。

そのドキドキを、怖がらないで

この絵と物語は、誰の心にもある「一番大切な願い」のことを静かに語りかけてきます。

シルクハットを被った小さな犬が立っている場所は、
「夢が叶った瞬間」の、ほんの一歩手前です。

長い旅を終えて、やっとたどり着いた。
でも扉の前で急に怖くなる。
「本当にここでよかったのか」「受け入れてもらえるのか」
喜びが頂点に達したその瞬間だからこそ、不安も最大になる。
これは、誰しも経験したことのある気持ちです。

  • 初めての就職先のドアの前
  • 結婚を決めた相手の実家のチャイムを押す前
  • 大切な人に「好きです」と告げる直前
  • 長年温めていた夢を世に出す瞬間

どの場面でも、心臓は同じようにドキドキする。
「叶ったら幸せになれる」と信じて頑張ってきたのに、
いざ叶いそうになると「もし違ったらどうしよう」と怖くなる。

でも、この絵が教えてくれるのは、
そのドキドキこそが「生きている証」だということです。

願いに向かって歩いてきた道のりは、決して無駄じゃない。
雨に濡れ、風に煽られ、何度も転びそうになったその全部が、
今の自分をここに立たせてくれた。

だから犬は、最後に一歩を踏み出します。
震えながらも、シルクハットのつばを押さえて、ノックをする。
その小さな勇気が、どれほど尊いか。

スターライト・ハウスは、実は誰の心の中にもあります。
それは「本当の居場所」「ありのままを受け入れてくれる場所」という、
誰もが一度は探し続けた場所。

あなたが今、どんな旅の途中でも、
どんなに遠回りしても、
いつか必ずその丘にたどり着きます。

そしてそのとき、きっと同じように胸がドキドキするでしょう。
でも、どうかそのドキドキを怖がらないで。

扉の向こうには、
あなたを待っていた誰かが、
同じリズムで心臓を鳴らしているから。

星の灯る家は、いつもそこにあって、
ただ静かに、あなたが来るのを待っています。